M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年2月1日更新会社・事業を売る
M&AのTSA(Transition Service Agreement)とは?意味・契約の内容、TSAまでの流れも解説
M&A件数は年々増加しており、企業にはM&Aに関する知識が求められつつあります。TSAはM&A最終段階における重要な契約で、M&Aを検討するうえで知っておくべきでしょう。本記事では、TSAの契約内容や契約の意義などを紹介します。
目次
M&AのTSA (Transition Service Agreement)とは?
M&Aの一般的な流れには、大きく分けて「交渉前フェーズ」「交渉フェーズ」「交渉後(クロージング)フェーズ」の3つがあります。
交渉前フェーズは、企業がM&A仲介会社にM&Aに関する相談、ノンネームでM&A相手先の候補を探す時期です。交渉フェーズはネームクリア後のトップ面談やM&A取引価格の交渉、デューデリジェンスなどを行う時期です。
交渉後(クロージング)フェーズは、当該M&Aの条件決定、最終合意のもと各種引き継ぎを行う時期です。そのなかでもTSAは、交渉後フェーズの際に非常に重要な役割を果たします。TSAの概要を理解しておきましょう。
TSA(Transition Service Agreement)とは?
M&A対象事業・企業の移行期間中におけるサービス提供に関する契約がTSAです。TSAは、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書など、M&A最終段階の各種契約と総称して売買契約書(DA)と呼ばれることもあります。
TSAの意味と必要性
事業譲渡や会社分割といったM&Aスキームを採用する場合、M&Aのクロージング(対価支払いなど)までに、すべての業務内容の移行が完了できないケースは多々あります。
それらのリスクを事前に把握するために、買い手企業はデューデリジェンスなどを通じて、M&Aの障壁になるような事由や移行難易度の高い順に洗い出しを行い、M&Aのスムーズな実現を図ることが大切です。それらの事由をTSAの対象に盛り込むことで、M&A実施後の移行期間中のトラブルなどを未然に防げます。
近年では、PMI(=合併後の統合、事業統合)がM&Aのなかで最も重要なプロセスです。しかし、M&A実施後を見据えた契約であるTSAは、PMIをしっかりと行っていくうえで非常に重要な要素です。事業譲渡や会社分割といったカーブアウトを伴うM&Aスキームでは、TSAが活用される場合がほとんどだといえます。
M&Aの対象事業・企業の一部機能が、なんらかの形で親会社などの業務システムに依存している場合、業務引継ぎに難航する懸念が高く、より一層TSAに注力する必要があると考えられています。
TSAはM&Aのどんな場面で行われる?
TSAは、M&Aの流れなかで交渉後(クロージング)段階で結ばれます。買い手企業によるデューデリジェンスでは、M&Aの対象事業・企業にどれくらいの価値があるのか、またM&Aを取り組むうえでのリスクはどのようなものがあるのかなどが総合的に調査されるのが一般的です。
TSAの対象となるのはデューデリジェンスの結果で移行難易度が高いと思われる事由が中心で、M&A実施後のサービス管理方法を明らかにしたうえで各種移行を円滑にする目的があります。
実際のM&Aでは、最終的な契約締結の段階で同時にTSA契約を締結するのが一般的です。この段階で締結できないと、M&A後の業務継続に支障をきたすおそれが考えられるため、最終フェーズで締結できるようデューデリジェンスと並行して行うがベストです。
TSAの締結には専門的な知識が必要となります。また、M&Aの交渉や各手続きをスムーズに進めるうえでも専門家のサポートは必要不可欠です。M&Aをご検討の場合はぜひM&A総合研究所へご相談ください。案件ごとにM&Aの知識・支援実績豊富なアドバイザーが専任につき、M&Aをフルサポートいたします。
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M&AでTSAに含まれる契約内容
ここまで、M&AにおけるTSAとはどのような契約なのか、M&Aのどのような場面で使われるのかを確認しました。この章では、TSAで盛り込まれる契約内容を解説します。ここで取り上げるのは、いずれもM&Aの対象事業・企業がもともと大手企業グループ傘下に属していた場合の事例です。
人事・財務・総務など
人事・財務・総務などの間接業務を中核企業に依存したシェアードサービスなどで運用している企業は多く存在します。これらの業務の引継ぎは、対象資産等の単純な所有者移転、名義変更などと同じスピードでは行えない場合が多いです。M&A後も買い手が売り手側のシェアードサービスを利用できるかどうかなどをルールメイクする必要があり、その際にTSAが活用されます。
M&A実施後も一定の移行猶予期間を設定し、引き続き本社の機能・サービスなどを利用できるよう契約を締結する(どのようにサービスを管理するかを取り決める)ことで、さまざまな形で移行期間中への手当てを施すことが可能です。一般的には親会社などに依存をしやすい、人事や財務・総務といった間接業務がTSAの契約内容の代表例に挙げられます。
ロジスティクス
一般的に顧客のニーズに沿って在庫を調整し、物流の効率化とコスト削減を目指す「ロジスティクス」を導入する企業は多いです。売り手のロジスティクスに対してTSAの契約を結ぶと、買い手はクロージングやPMIが実施しやすくなるメリットがあります。
例えば、ロジスティクスで在庫管理や出荷タイミングを図っている企業を買収した場合、TSAを締結していないと一時的に物流コストが高額になってしまうことが考えられます。ロジスティクスも契約対象とし、M&A後も一定期間はTSAの対象として業務を行うのがおすすめです。
サプライチェーンマネジメント
グループ全体で仕入れを行ったり、仕入れ・調達・物流専用の会社を傘下に設置したりするなど、スケールメリットを生かしてコストを削減している企業は少なくありません。M&Aの対象事業・企業が仕入れや物流をグループ企業に依存している場合は、M&A実施後にサプライチェーンをどのように管理するのか適切に定めておかなければなりません。
例えば、M&A実施後の一定期間は、売り手企業側の仕入れ・物流機能を買い手側が引き続き利用するなどが挙げられます。仕入れ・調達・物流といったサプライチェーンマネジメント領域も、TSAの対象になり得ます。
研究開発、優良顧客情報
基礎研究部門や研究開発部門が本社や別会社に集約されている場合、それらの事由もTSAに盛り込まれる可能性が高いです。グループ全体で優良顧客の情報を一元管理しているケースも、買い手企業がどこまでその情報に触れる機会があるのかを定めるのが肝要で、TSAの契約内容となる場合があります。
M&AでTSAに関連する契約
TSAはM&Aの交渉後フェーズのプロセスの1つであり、ほかの各種契約と総称して売買契約書(DA)と呼ばれるケースがあると前章で述べました。ここでは、TSAと同じカテゴライズがされる各種契約を解説します。
最終契約
M&Aの一連の流れで大きな意味を持つ契約書は2種類です。交渉フェーズでは、大筋合意の意味で締結される「基本合意契約書」と、デューデリジェンスを踏まえて詳細条件を決定した後に結ばれる「最終譲渡契約書」があります。
最終譲渡契約書はM&Aスキームによって契約名称は異なり、株式譲渡であれば株式譲渡契約、事業譲渡であれば事業譲渡契約と呼ばれる契約書を交わします。最終契約では、M&A取引の対象企業・事業の特定、譲渡価格、デューデリジェンス結果への対応、クロージング後の各種取り決めなどが、主な構成要素です。
基本合意契約
基本合意契約では、譲渡価額・譲渡日・スケジュールなど基本的事項が定められます。ここまでの交渉で合意された内容を整理し、M&Aの成立に向けた双方の認識を合わせることが大きな目的です。
これから実施されるM&A取引を円滑に進めるために欠かせない、トップ会談後の両社が合意した事項に関して専門家の意見も踏まえながら整理したうえで書面上で合意を形成するのが一般的です。
業務受委託契約
業務委託契約とは、一般的に自社で対応できない業務などを自社以外の企業や個人などの外部ソースに委託する契約のことです。業務受託契約はその逆で、他社で対応できない業務などを自社で受託する契約といえます。M&Aの交渉後段階における業務受委託契約は、TSAに盛り込まれている対象業務を受委託する契約です。
上述した例でいえば、M&A売り手側の親会社のシェアードサービスをM&A実行後も引き続き買い手企業が利用するために、人事・総務といった業務に関して業務受委託契約を交わします。
M&AではTSAと業務受委託契約は不可分の関係にあり、TSAにてどのようにサービスを管理するか取り決め、具体的に業務受委託契約にて取引契約を交わすイメージです。
TSAを実施するまでのM&A手続きの流れ
M&Aを行う際は、売り手側と買い手側の間に仲介会社などが入って進むことが多く、仲介役となるのは金融機関やコンサルティング会社、M&A仲介会社などです。M&Aを検討している場合は、売り手も買い手もまず仲介会社などのサポート先をみつけることから始めます。
実際のM&A手続きの流れは、「準備段階」「交渉段階」「最終契約段階」の大きく3つのフェーズに分類され、TSAは「最終契約段階」で取り交わします。ここでは、TSAを実施するまでのM&A手続きの流れを説明します。
①準備段階に行うM&A手続き
準備段階では、M&Aが必要なのか検討し実施を決めたうえで、サポートを依頼するM&A仲介会社と相談しながら相手先を選定します。
この際、売り手企業はM&A仲介会社と秘密保持契約およびアドバイザリー契約を結び、自社が特定されないよう匿名で要約書を作成するノンネーム登録を行います。その後、企業価値評価を実施して売却希望価格を設定し、企業概要書も作成する流れです。
準備段階に行う主なM&A手続きを以下にまとめました。
- 秘密保持契約
- アドバイザリー契約
- ノンネーム登録
- 企業価値評価の実施・企業概要書の作成
②交渉段階に行うM&A手続き
交渉する相手先が決まったら、トップ同士の会談や具体的な条件交渉など交渉段階へと進みます。買い手企業は売り手企業の秘密保持契約や企業概要書を確認した後、M&A仲介会社とアドバイザリー契約を締結します。
交渉段階で買い手企業と売り手企業のトップ会談を行い、お互いがM&Aの内容に大筋で合意したら基本合意締結書を結ぶ流れです。
交渉段階に行う主なM&A手続きを以下にまとめました。
- 秘密保持契約
- 企業概要書の確認
- アドバイザリー契約
- トップ会談
- 基本合意
③最終契約段階に行うM&A手続き
売り手・買い手で基本合意書を交わしたら、買い手によるデューディリジェンスが実施され、最終契約へ向け手続きを進めます。最終段階での主な手続きには、以下の6つがあります。
- 最終合意
- 最終契約の締結・クロージング
- ディスクロージャー
- クロージング監査や譲渡価格の修正
- 株式の譲渡と対価の支払い
- TSAの実施
まず、デューデリジェンスの内容をもとに買収条件の最終確認を行います。基本合意時点では、企業価値をベースに交渉したおおよその買収価格が決定されるのが基本です。
もしもデューディリジェンスによって簿外債務や法的リスクなどが発覚した場合は、買収価格を下げるだけでなく条件の追加や変更、最悪には白紙に戻るケースもあり得ます。デューデリジェンスで問題なければ、最終合意をもとに最終契約を締結します。TSA契約は、実際に株式などを利用した売買実務を進めていく段階で進めていく流れです。
その際、株主などの利害関係者に経営実績、財務・業務状況を公開し、譲渡価格の変更がある場合は最終調整を行います。最後に株式の譲渡・対価の支払いが行われ、TSAが終了した時点でM&Aが完了です。
M&AのTSAまとめ
M&A市場が活況を呈している一方で、国内では統合後の管理ができておらず、計画どおりの効果が生じないケースが多かったため、M&A実施後のPMI(事業統合)が最も注力すべきフェーズだとされています。TSAはPMIの土台となる要素であり、TSAへの理解を深めることがM&Aの成功を導くものです。
日本国内の内需縮小やグローバル化の進展に伴い、企業規模や業種を問わずM&Aの件数は増加傾向にあります。今後の事業計画を検討するうえでM&A戦略の立案は多くの企業で必要になってくるものであり、そのための事前準備や情報収集は実施しておくべきものといえるでしょう。
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